労働組合として経営問題にどう取組むか


2001426日にA医生協労組で行った話しに手を加えたものです)

高知県医労連書記長 田口 朝光


はじめに

@経営の専門家の見解ではない。運動上必要に迫られて(土佐市民病院における人件費攻撃への反撃が契機)の労働組合活動家としての見解。

A日本医労連の公式見解ではない。個人的見解。
B主役は、あくまで当該単組。解決策の検討素材に。


 

1、労働組合としての経営分析の視点

 

(1)目的


@経営の実態、特徴を明らかにする。

A問題点とその原因を明らかにする。
B改善、改革の方向、具体的道筋を明らかにする。


(2)方法


@時系列分析(過去から現在までの時間的推移を跡付ける)
A比較分析(近隣病院、同規模類似病院、全国平均:全体、黒・赤別等)
 *医生協、民医連関係では、同規模、経営状況別にまとめた資料が見当たりません。同規模類病院との比較にならざるを得ません(院所ごとの経営資料はあります)。

 

(3)分析の視
@自病院の果たすべき役割、将来像、将来方向の検討の中に関連付けて経営分析を行う。
 *経営主義、経営数値の泥沼に陥らないよう注意が必要です。

A各経営数値を患者の医療、職員の労働条件と関連させて見る。
B各経営数値を決して固定的に見ない。変数として運動の観点で見る

 

(4)分析対象
@財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書等)

A医療数値(患者数、日当点等々)
 *医生協、民医連関係では、この資料も不足しています。


 

2、財務諸表の見方の初歩


(1)「貸借対照表」(BS)

 病院のある一定の時点における財産(資産)の状態を表現した書類です。
 貸借対照表の数値は、日々時々刻々取引があるたびに動いていますが、そのうち3月31日現在の財産(資産)状況が掲載されています。病院経営の安全性を表現しています。借方(左側)に資産を、貸方(右側)に負債・資本を記載します。貸方(右側)は、資産の調達方法を表しています。借金で調達したのか、自前の資金なのかが分かります。あるいは、資産の増減が利益または欠損によってもたらされたものなのかが分かります。
 借方(左側)は、資産の運用状況を表しています。流動資産としてあるのか、固定資産としてあるのかが分ります。


  貸借対照表(BS)

  借方              貸方

流動資産

 現金預金

 たな卸資産

 その他

流動負債

 一時借入金

 未払い金

 その他

固定資産

 有形固定資産

 無形固定資産

 投資

固定負債

 長期借入金

 組合員借入金

 引当金

資  本

 資本金

  自己資本金(出資金)

  剰余金

  利益剰余金(前期未処
  分利益
+当期純利益)



(2)「損益計算書」PL)
 ある一定期間(大概の場合、4月1日から翌年の3月31日までの1年間)の営業成績をまとめた書類です。貸借対照表の借方(左側)に示された資産を活用して、事業を営むわけですが、大雑把に言ってどれだけの現金預金を使って(費用を使い)、どれだけの収入を得たのか、つまり、現金預金の増減の説明をするものです。
*大雑把にと言ったのは、現金預金の増減は、貸借対照表上で処理される借入金の返済や退職金の支払い(=引当金の取り崩しでの退職金の支払い。それを超える分は、損益計算書の人件費の科目に計上する)によっても生じるからです。
 病院の1年間の医業(事業)収入等がいくらで、それに要したさまざまな経費がいくらであったかが分ります。病院の収益力、活動力を表現しています。@医業(事業)収支、A経常収支(@に医業外収入、費用を加えたもの)、B純(総)収支(Aに特別利益、特別損失を加えたもの)の3つからなっています。  
 借方(左側)に費用を、貸方(右側)に収入を記載します。

 
 損益計算書(PL)


  借方               貸方

医業費用

 人件費

 材料費

 経費

 その他

医業収入

 入院収益

 外来収益

 その他

医業外費用 医業外収入
特別損失 特別利益
当期純利益 当期純損失

 

(3)注意点

@発生主義をとっている(=買掛金、売掛金等)。(⇔現金主義)

 取引があった時点で記帳しますから、実際に現金が入ってくるまでに時間的な落差があります。
 また、売掛金にあたる診療報酬収入などは、確実に現金預金として入ってきますが、未収金として資産計上されているものの中には、実際には回収不能のものが含まれていますから要チェックです。現金の動きとは落差があります。
 
A現金の支出を伴わない会計処理がある。(=減価償却費、退職給与引当金)

 ⇒見せかけが一人歩きする危険性がある。特に、累積欠損金に惑わされがちです。本質と現象の区別が重要です。

(4)累積欠損金をどう見るか(評価するか)
 経営問題が論議になる時に必ず出てくるのが、累積欠損金です。組合員の中にも赤字なら仕方ないと単純に受け止める傾向もあります。累積欠損金とは何か、どう見たらよいのかが一つのカギを握っています。次にこれについて見てみましょう

 例として挙げたケースA、B、Cをみてください
 ココをクリック→ A、 AA、 B、 BA、 C、 C A、 CB、 CC これは、貸借対照表と損益計算書との関係、それぞれの動きが分かるよう単純化して示したものですが、累積欠損金の姿も浮かび上がってきます。
@累積欠損金=赤字=借金とイメージしがちですが、関係はしていますが単純にそうではありません。累積欠損金の額と借入金の額とは違うことは一目瞭然です。
A欠損金の額は、経営規模との関係で相対的に見ることが重要です。同じ3億円の累積欠損金でも資産規模50億円、事業規模30億円の医療生協とそれぞれ30億円、20億円の生協とでは重みが違います。
 また、意外と盲点になっていることが、家計の(収入規模の)感覚で「ワー大変だ」と判断していることが意外と多いということです。日頃なじみがない大きさだけに、感覚的に負けている場合が多いのではないでしょうか。
B現象と本質を見極めることが重要です。減価償却費、退職給与引当金の額によって(累積)欠損金は増減します。しかし、先に見たとおりそれらは、現金の支出を伴いませんから、欠損金が増えることは借金が膨らみ、現金預金が減少することを単純には意味しません。
 私たちの常識的な感覚からすれば、欠損金が増えていっている状態で現金預金が増えるということは考えにくいことですが、ケースCのB、Cはそのケースです。
 更に
CのCのケースでは、借入金も返済しています。いわば、欠損金の増減は現象を表しているといえます。
 A当医療生協の貸借対照表をグラフ化したものを見てください。2000331日 のBSのグラフの横に、同Xというグラフをつけています。これは、99年度末における退職給与引当不足額26千万円(期末に全職員が退職するとして必要な退職金の支給額の40%に対する不足額)を欠損金として加え、その分退職給与の引当額を増やしたものです。
 これによって、現金預金が増えたわけでも減ったわけでもなく、流動比率に変化があったわけでもありません。欠損金が増えた分、退職引当が増えて、左右のバランスをとりながら背伸びしただけです。

 あえて言えば、累積欠損金を消すため左右の足切りをした場合(貸借対照表では累積欠損金は貸方−右側にマイナスの数値で記載されますから、この状態のグラフが貸借対照表の表現には適合します)、自己資本(出資金)が削られ、一般的な表現を使えば自己資本がかなり食われている状況になります。当然、自己資本比率も下がります。しかし、現金預金、借り入れ金額に変化はありません。
Cそれでは、累積欠損金は一切無視していいのかというとそうではありません。本質が現象として顕れているからです。 この場合の本質とは何でしょう。CのCのケースを見てください。
 減価償却費、退職給与の引当がなければ、本来単年度1.5億円の利益を上げていました。それが40年間の累計で60億円です。
 しかし、実際には減価償却を累計で40億円、退職給与の引当を累計で40億円したために20億円マイナスになり、それが20億円の累積欠損金として表面上(帳簿上)顕れているのです。
 それでは実際の金の動きはどうなっているのでしょうか。減価償却費、退職給与引当は、現金の支出を伴っていないわけですから、60億円が40年間で溜め込まれたはずです。
 内訳を見ることにします。そのすべてが、現金預金としてあるわけではありません。借入金返済に20億円、退職金支払いに20億円、そして残り20億円が現金預金として留保(上積)されたのです。
 この実際の金の動きが本質です。ここをしっかりと見極めることは重要です。
 *ここでのケース検討では分かりやすくするために、固定資産の取得は40年後にまとめてするようにしていますが、実際には必要に応じて留保資金の一部が固定資産の取得に回されたり、そのために新たな借入金がなされることが一般的です。

 

3、民医連「新統一会計基準」等への対応


(1)「新会計基準」の評価できる点と検討課題
@「恣意的会計処理が経営問題への対応を遅らせ危機を招く一要因」との問題意識は評価できます。しかし、基準の明確化と同時に、逸脱を防ぐ手だてが重要です。基準の明確化は、そのための必要条件ではあっても十分条件ではありません。

管理者教育、経営資料の公開、全職員参加の経営、大衆的な監視体制の強化などが、併せて必要です。基準の遵守が、経営の硬直性を招かないよう注意が必要です。
Aキャッシュフロー計算書の導入は、活用方法の問題を別にすれば、経営実態をより正確に表現し、透明性を高めようとする点では評価できます。しかし、経費削減、特に人件費削減の材料作りに使われるのであれば問題です。
*経営の粉飾決算、経営責任の回避−労働組合の経営問題への取り組みの弱さの典型例として、土佐市民病院が挙げられます。19873月 末と883月末の貸借対照表の違いは一目瞭然です。流動負債を固定負債に粉飾し、資金繰りの苦しさを隠していたのです。病院当局は、それを一挙に表面化させ、「赤字の原因は、人件費の高さにある」、「その根底には職員の企業意識のなさがある」と「合理化」攻撃をかけてきました。長い攻防の末、92年度には本庁から66千 万円の長期の貸付が行われ、翌年度にはそれが特別利益として繰入れられ、累積債務をその分解消しました。

 

(2)会計基準と経営上の目標数値との区別が重要です。
@「税法上の取り扱い」の必要上、両者が混在している場合があります。退職給与の引当金、減価償却費等がそうです。

やむを得ない面もありますが、少なくとも退職給与の引当については、税法改正、「新会計基準」の実施で両者の区分がはっきりしました。
 税法上は20%までを損金算入(2001年度は30%)、「統一会計基準」では50%へ5年 間で段階的に引き上げをめざしています。50%の引当は、「会計基準」ではなく明らかに経営の目標数値です。
 なぜ両者の区別が重要かといえば、経営の目標数値は運動とも絡めて議論の対象となりますが、会計処理の基準準となると規範的取扱いをされ議論の枠外に置かれがちだからです。組合員の意識もそれで負けてしまいがちです。
A経営対策のための「要対策10項目」は、明らかに経営の目標数値であり目標設定の妥当性について大いに議論(団交)の対象とすべきです。
 この中には大まかに2つの種類の数値が掲げられています。1つは、「経常収支で5%の利益確保」というような経営における運動目標です。もう1つは、「流動比率の目標値120%」というような、経営状況の評価の基準が盛り込まれています。
 前者については、真正面からの政策論争が必要です。後者も、結局は運動目標につながっていきますが、個々の法人のおかれた状況によりかなり幅があるものだという認識が必要です。

 

(3)経営の実態は、会計処理の方法、目標数値、評価の基準の変更によっては、何も変わらないことをしっかりと理解することは重要です。
 ここを抑えておかないと、基準の変化によって(ほとんどの数値が厳しくなっているため)経営自体が悪くなったと錯覚し、一喜一憂しがちです。

 例えば、こどもが国語のテストで60点を採って、クラスでは20番であったとします。お母さんはそれでは満足せず、学年では何番か聞きました。70番でした。しかし、学年で70番であることが分かったからといって、点数が50点 に下がったわけではありません。
 経営状態の評価にあたっては、より実態に近い把握を可能にするために、多面的で広い視点からの評価が必要ですから、基準の変更をそういうものとして限定して捕らえることが必要です。
 併せて、財務諸表の見方のところで指摘した、実態を見る目を持つことが重要です。

 *職員の関心を経営問題に向けさせるため、基準の改定が、危機感をあおる手段として使われている傾向を感じます。しかし、それが先に指摘した経営自体が悪くなったという錯覚とあいまって、職員の自信喪失を招き、ひいては運動への確信を失わせる原因になったとしたら大きなマイナスです。 職員に経営問題に関心を持ってもらうためには、経営理念を明確にしそれとの一体感を職員に感じさせることが前提であり、少なくとも経費削減、要求抑え込みのための経営危機の宣伝は戒める必要があります。経営理念、将来方向、将来展望の提示を先行させ、経営問題を真正面から冷静に提起することの重要性を指摘することが必要です。

(4)経営問題を真正面から受けて立つ姿勢と力量が求められています。
 やたらと経営危機をあおる経営陣も問題ですが、組合の要求を言われるままに飲む経営陣も問題ありです。現金の支出を伴わない引当金、減価償却費でつじつまを合わせ、経営対策を遅らせ、問題を大きくするだけ大きくして結局は行き詰まらせ、全ての付けを職員と生協組合員に負わせることになりかねません。
 要求が通らないこと、厳しい局面に対面することは、つらくしんどいことですが、それを避けずに真正面から受け止め、事態の本質を見極め、展望を見出す力量が必要になっています。
 経営陣が、真正面からの政策論争を避けているような場合には、あえて労働組合側から問題提起をすることも必要ではないでしょうか


 

4、A生協の経営の現状をどう見るか

 
(1)損益計算書
 別紙につけたグラフを見てください。基本的に右肩上がりに収入が増えていることが分かります。

 別紙の損益計算書の経年比較88-9912年間を比較しましたが、中間の年度は割愛しています)から具体的な数値を拾うと次のとおりになります。
@12年間(1988-99)で事業収入71.0%増、事業費用68.4%増。人件費92.1%増。同比率は53.6% から60.2%へ。減価償却費は14.0%増に留まっています。経費93%増。

 12年間事業収支は一貫して黒字。

A支払利息負担の軽減 −87761(千円)、‐67.5%。これが経常収支の改善に貢献しています。
 94年度以降黒字に。
B93年以降98年度を除き純収支でも黒字。87年度以降特別損失が増大。
 
97,99年度は退職給与引当への繰入、98年度は賞与引当金。

(2)貸借対照表
 別紙のグラフを見てください。1998年度にC病院が開院したため固定資産が増えています。その分長期の借入金が増えています。 
 このグラフを一瞥して気付くことは、資本金、退職給与の引当の内部留保資金の増大です(自己資本比率は
5.6%から15.5%に。ちなみに、「要対策10項目」では10%以下が危険で、目標値は20%以上となって います)。組合員からの新規の長期の借入は、この間制限してきているようですが、定期預金の利子を少し超えるくらいの利息で受け入れており、これも一種の自己資金とみなせます。これを加えた修正自己資本比率は、実に47.2%となります。
 あと1つ気付く点は、流動資産の豊富さです。回収不能な未収金はないかなど精査は必要ですが、流動比率(流動資産÷流動負債×100)は、実に213.2%となっており、極めて安定的な資金繰りを表しています(ちなみに、「要対策10項目」では100% 以下が危険で、目標値は120%以上となっています)。
 別紙の貸借対照表の経年比較88-9912年間を比較しましたが、中間の年は割愛しています)から具体的な数値を拾うと次のとおりになります。
 @流動資産5億4千万円(49.1%)増。固定資産3億6千万円(21.7%)増。
  流動負債
42千万円(121.4%)増。固定負債8千万円(3.4%)増。
  出資金
55千万円(169.9%)増。
 A累積欠損金:‐331710(千円)。減価償却累積額:2,101,274(千円)。
     有形固定資産   1,856,963    
        有形固定資産  3,958,237

    減価償却累計  2,101,274

 (3)評価
@強くはないがある程度の収益力と安定的な財務体質とを備えています。ただし、将来の退職金支払問題は対策が必要です。

A医療生協の特質が発揮されています。「2つのエンジン」(事業収入と出資金、組合員借入金)。特に、出資金の増が、豊富な流動資産を生み出し、経営と資金繰りの安定性をもたらしています。
B豊富な流動資産の活用が適切に行われているのか疑問を抱かせます。1998年のC病院の開院の資金も長期借入で賄われています。993月は前年同月比で4億7千万円長期借入が増えています。同時に流動資産も13千 万円増やしています。
 (減価償却+リース料+支払利息)/事業収益」は、過剰投資となっていないかを見る指標ですが、99年度で5.3%となっています。「要対策10項目」は、12%以上が危険で、目標数値は、7〜8%としています。

 また、一方、借入金総額の事業収入に対する比率は、99年度で45.4%となっています。この指標は、キャッシュフロー計算書の導入で今は削除されていますが、65%以上が危険で、目標数値は30%となっていました。C病院建設の際、自己資金を活用せず、なぜ借入資金に頼ったのか疑問です。 
 「定期預金が使われずに眠っている」との指摘もあります(これは、組合役員との話しの中で出されたことです)。適切な自己資金の活用、投資による収入増が要検討です。

 

5、退職金問題への対応


 経営側から定年時の1.5倍の係数廃止と激変緩和措置(5年間で段階的に1まで持っていく)が提案されています。法的な対抗手段の行使も考えられますが、まずはきちっとした現状分析が必要でしょう。

(1)現状把握

1)他病院との比較と特徴(B医生協等との比較) 

@支給月数としては、相対的に高くなっています。B医生協と59才まではほとんど変わりませんが、定年時の1.5倍の係数があるとないとで大きな差が出てきます。  資料1

A基本賃金は相対的に低くなっています。B医生協との比較でも、59才までB医生協の累積賃金が高く、定年時の退職金割増で一挙に生涯賃金で追い越す形になっています(これはB医生協との比較であり、国公立公的医療機関との比較では生涯賃金で大きく引き離されています資料2)。   A医生協 B医生協 A−B比較

B退職金の比重が相対的に高くなっています。

 全社連に次いで高い数値で、生涯賃金の約15%を退職金が占めています。他は、約10%となっています。

 退職金は賃金の後払いの性格を持っていますが、どちらかというと老後の生活資金に当てられるものです。そういう点で、賃金には変わりありませんが、月例賃金や一時金とは使途が若干異なります。また、後払いまでの間、経営内に留保され無利息の運転資金として活用されてきたといえます。


(2)これまでの退職金支払、引当の状況

@処理の方法
 これまでの状況は、資料3のとおりです。
 
退職金の処理は基本的に貸借対照表上で行われ、退職金の支払い分だけ現金預金が減り、それと対応して引当金の額が同額減ります。損益計算書には出てきません。損益計算書の人件費の項目に出てくるのは、引当金からの戻入れを超える分のみです。
 資料3の注に書きましたが、退職給与引当からの戻入れ金額は、一度損金扱いされ、負債として貸借対照表に載っているものですから支払退職金と相殺され、戻入れを超える分のみが人件費として計上され訳です。
 戻入れ金が、特別利益に入れられると相殺されず(税法上は相殺さ
れるとしても)、損益計算書に支払総額がそのまま退職金として計上されます。従って、この場合には人件費が相対的に大きく表示されます。
  →資料3-A
 また、退職引当金への繰入れについては、一部を特別損失で落とすとその分人件費の項目に計上される金額が減り、人件費の見せ掛けが小さくなります。 
    →資料3-B

 もともと退職金の会計処理は複雑な上に、年度により会計処理の方針が変わっているのでなおさら分かりにくくなっています。資料3の注をよく読んでください。 
 損益計算書の人件費の項目に出てくる退職金額と繰入額が全てだと思っていたら間違いです。注意しましょう。

A概要

 資料3のDが、退職者に支払われた退職金総額です。Eが、単年度に要した退職金関連の支出額です。
 Eが、5年間の平均で1億1千9百万円、Dが同じく5千6百万円となっています。 資料3は、総代会資料から拾い出したものですが、資料4は管理部から提出してもらった資料です。本来なら資料3のDの金額と資料4の退職者合計の退職金総額とが一致しなければなりませんが、相違の原因は今は不明です。
 5年間の平均で6千2百万円の支出となっています。退職引当金総額は、4億9千万円です。


(3)考えられる対応

1)シュミレーション

@資料4に今後10年間の簡単なシュミレーションをしてみました。中途退職者を過去5年間の平均で押さえ、定年退職者については管理部の試算によりました。

 制度改正しなければ、年平均2億2千万円の退職金支払いが生じます。1.5条項を廃止した場合、緩和措置を考慮しなければ1億6千万円となります。
 1999年度で退職関連経費として1億6千万円支出し、しかも、純収支で僅かながらも利益を出しています。また、5億円弱の引当もあります。緩和措置の検討も十分可能です。
Aシュミレーションにおける検討項目・定年退職者、中途退職者が出た場合、平均年齢、平均同勤続年数、平均賃金は当然下がります。

 過去の年度ごとの職員数、平均年齢等を一覧表にまとめ、退職者数、退職金額とその他の人件費との相関関係等をつかんでみることも必要です。

 また、年齢別の職員数を調べ、今後の年齢構成を大づかみに把握することも重要です。

事業収入の伸び、出資金の伸びをどう見込むかもカギになります。

・中途退職者を低く抑えることも要検討です。


2)当面の対応

@見直しをしない場合どういうことが予測されるか。年平均22千万円の退職金支払いが生じます。約5億円の引当を10年で均等に取り崩すとして17千 万円の支払い原資が必要です。
 99年実績が16千万円ですから、事業収入の伸びいかんでは毎年度損失を出さずにいける可能性もあります。ただし、10年後には退職引当がゼロになり、現金預金が5億円減ることになります。流動比率は100% を切ることはないにしろ、資金繰りはかなり苦しくなります。
A1.5条項を廃止し、緩和措置を実施しない場合、毎年の支払いは16千万円となります。99年度の実績からいえば、支払いは十分可能です。しかも、緩和措置を実施しなければ、5億円弱の引当は温存でき、資金繰りが苦しくなることもありません。し かし、1.5条項の廃止は生涯賃金の大きな目減りをもたらします。B医生協との比較でもその影響額がいかに大きいかが分かります。現在、経営側から提案されている緩和措置以上の検討も必要かもしれませんし(現在の提案では原資はそう膨らみません。なぜなら今後5年間は定年退職者数が少ないからです)。
 労働組合側が提案している雇用延長は、支払い原資の増加をもたらさず、しかも生涯賃金の目減りを抑えることができます。
 また、経営側提案の激変緩和措置が終わった後、数年間限定して早期退職者への割増制度を設けることも考えられます(恒久的な措置としての早期退職者の割増制度は、中途退職者を増やす可能性もあり、定年退職の山が過ぎてからの措置として検討すべきでしょう)。

 緩和措置を厚くするかどうかは、支払能力、経営の安定性確保とのバランスの問題ですから、増収策も含めた動的なシュミレーションを労使で十分練る必要があります。それによっては、緩和措置にある程度幅が出てくることは当然です。

3)長期対策

@制度改定と激変緩和措置が終わった時点で、基本賃金の上積みの方

向での見直しが必要でしょう。1.5条項により補っていた生涯賃金の目減りが、まともに来るからです。労使合意による中長期的な賃金政策の立案が課題となります。

Aその際1.5条項を除いてもまだ、他の医療機関と比べて退職金の比重が高い賃金構成も、議論の結果はどうあれ、論議の対象とすべきでしょう。
月例賃金と退職金、特に定年退職金との役割の違いを前提に、組合員のライフスタイルのありようともからめて、生涯賃金の総額とその配分をも議論すべき時期といえます。

B外部積み立ての企業年金も検討課題となるでしょう。

 

6、労働組合と経営問題

(1)「騙されないための分析」から「生み出すための分析」へ
 経営問題や政策問題への関心が近年富に高まっていることは、昨年の日本医労連の医療研究集会の政策問題の分科会の盛況振りからもうかがえます。参加者の数だけではなく、あらゆる性格別の医療機関から満遍なく参加者を得たのも特徴です。

 その背景には、現在の産別統一闘争を背景とした「力で押す」運動形態への一種の「行き詰まり感」が共通しており、その出口を政策闘争、経営分析に求めているように感じます。
 その際、地場の民間病院の場合には、利益をごまかし、内部資金の豊富さを隠すための様々な粉飾が行われ、その一方で賃金抑制や「合理化」が行われる場合がままあり、「騙されないための分析」が重要になりますし、運動論からも重点になるでしょう。
 
しかし、民医連・医生協の場合には、経営陣の専横や逸脱がまったくないとはいえませんが、運動の観点からの中心課題は、厳しさを増す医療情勢の中で積極的に経営理念を打ち出し、経営的にもより積極的な方針を確立するよう経営陣に迫ることではないでしょうか。そのために、会計処理の方法が元々持つ粉飾性を払拭し、極端な場合には経営陣の自信喪失、能力問題も含め、労働組合がともに「生み出す」観点から経営問題に積極的にかかわっていくことが重要ではないでしょうか。

(2)「支払能力」論をどう見るか−「生計費」論の死角
 私たちはこれまで「生計費」論の立場から、「経営の苦しさと職員の個々の生活の苦しさとは対等」、「賃金は生計費の価値で決まるのであり、おまけするわけにはいかない」、「経営のことは経営者の責任、こちらは労働力の価値通りに払ってもらう」、「それができないのであれば実力行使だ」、というような教科書的な責め方ではなかったにしろ、これに近い運動を行ってきたのではないでしょうか。
 
90年代初めまでの大局的に右肩上がりの時代には、それで十分通用しました。また、組合側も「生計費」論の有効性を実感できました。
 しかし、キャッチアップの高成長型経済から成熟型の低成長経済へ移行し、バブル崩壊の影響も受けている現在、行き詰まっているのは自民党流政治だけではなく、高成長を前提とした私たちの運動スタイルもまたそうであるのではないでしょうか。
 過去、「生計費」論に基づき組合の組織力量でかちとってきたと思ってきたものは、実は経済(企業)の成長に支えられた支払い能力の拡大によるところが大きかった、とはいえないでしょうか。組合の組織力量により確かに獲得するものは違っていたとしても、結局は企業の支払能力の範囲内でのことであり、それに大きく依存してきたのが実態ではないでしょうか。いままでは、支払能力に余力があったため支払能力の壁が見えず、すべて組合の闘争力によって決まるかのような錯覚を抱いていたのです。
 もしそうであるならば、私たちは大胆にというか率直に、「支払い能力」論に踏み込むべきではないでしょうか。そうでなければ、支払能力の壁を打ち破ることはできません。存在をきちっと認めない限り、それとの有効なたたかいはできないからです。
 誤解のないように私が言いたいことを再度強調すると、支払能力を認めその範囲内で我慢することを薦めているのではなく、むしろ自分たちの要求を有効に獲得するためには、現実に存在する支払能力をきちっと認識し、それと有効にたたかう方法論を確立する必要があるということです。


(3)「支払能力」論に踏み込むにあたっての視点

@まず、第に支払能力を見極める目をもつことです。「支払能力の限界」という表現を使うと「限界」として何か1つのものがあるような印象を与えますが、元々幅のあるものです。その認識の上に、労組としての支払能力の限界の見極めが必要です。
A第2に支払能力を固定的に見ないということです。固定的に見る視
点からは、結局は我慢しか出てきません。 ある一定の時点においては、どうしようもない支払能力の壁が存在します。その壁の前では、我慢するか、「我が亡き後に洪水よきたれ」式にやみくもに突進するか、はたまた、たたかうポーズだけはとって我慢するしかないでしょう。

 B第3は、支払能力を運動論の立場から生み出させる、生み出す視点でとらえるということです。支払能力に限界があるという認識で留まっていたのでは、経営責任を免罪し、現状を甘受することで終わってしまいます。支払能力がないのなら、あるようにするのが経営責任です。それが、3年先なのか5年先なのか経営方針を明確にすることが、経営陣の責任です。

 民医連・医療生協においては、この追求も単なる一方的な追及ではなく、ともに生み出す視点を背景に持っていることが必要でしょう。

(4)経営参加型組合運動
 先に指摘した視点に立って「支払能力」論に踏み込んだ運動を展開することは、レベルの違いはあれ経営参加型の運動に入っていくことになります。
 行けるところまでは力で押して行って、経営破たんが本当に明らかになったら全面妥協をするとうスタイルではない、経営参加型の第3の道が模索されるべきです。

  @その際、経営参加のレベルに応じて、労組としての「経営責任」の問われ方の問題が出てくるでしょうし、また、労組固有の権利(団交権、争議権)に関し行使と抑制との調整の問題が出てきます。

 経営のおかれた状況、労使の信頼関係の積み上げ(また、その逆)の事情によって、経営参加のレベルや内容も変わってくるでしょう。

 しかし、「現在の資料は見せてもらいます」、「意見も必要に応じて言わせてもらいます」、「しかし、責任はとりません」、といったレベルの「経営参加」ではもはや限界があることは確かです。

Aより積極的な経営参加に踏み込む場合、事業収入から経費を引いた残りの配分、すなわち労働分配率をどうするかの落とし穴に落ちないようにすることが肝心です。

 また、別の観点からいえば、5%の経常利益を出すためにいかに人件費を抑えるかという論議にはまり込まないようにすることです。

 社会的水準の人件費(どの水準なのか粘り強い労使の話し合いが必要でしょう)を織り込み、その上で一定の利益を挙げる経営体質をどう築いていくのか、とのスタンスに立ち、立たせることが重要です。社会的水準の賃金を支払った上で5%の利益を確保したからといって反対する労働者はいないでしょう。

 なぜ、経営の長期ビジョンの中に賃金政策のビジョンがないのかという、単純な疑問を持つ感覚が必要です。

B経営陣との関係も変革の立場で臨むことが重要です。
 単なる配分交渉に陥らないようにと先に言いましたが、力で押す配分交渉が有効な場合もあります。それは、結果として経営陣の経営姿勢の変更を引き出すばあいです。労使の力関係で目一杯の回答をせざるを得なかった場合、経営陣はそれを挽回するために新たな増収策、経費削減策に着手し、相対的に高い人件費を織り込んでなおかつ利益を出す高収益体質への転換を試みます。発想の転換が伴う場合もあるでしょう。

 しかし、このようにいつもうまく行くとは限りません。労使関係が険悪になっただけで、現実の経営は何も変わらないという事態も往々にしてあり得ます。
 「結果として」から「意識的に」、そして、「相手にのみそれを求める」のではなく「自分たち自身が参加することによって変える」、とうい視点が必要になってきます。
 経営参加型運動に踏み込む度合いによって、経営陣に対する接し方、言い方を換えれば、労働組合の経営に対する責任のとり方も当然に変わってきます。責任追及型からの脱皮です。ここでも現実の経営が、実際にどのように変わるのかというリアリズムの視点での評価が重要です。

  
 

7、産別運動の課題と単組のたたかい

 

(1)医労連の賃金闘争の現状と困難性

 1)日本の労働組合の組織形態は、いうまでもなく企業別組合が主体です。それに伴って交渉形態もヨーロッパ諸国のように産業別組織による中央交渉中心ではなく、企業別の個別交渉が主体となっています。しかし、この交渉形態のみでは、企業間競争に巻き込まれ、個別企業の支払能力の壁に阻まれて要求闘争が前進しません。
 産業別組織はその弱点の克服をめざして組織されたものですが、企業別組合の連合体組織で、中央交渉の機能を備えていないのが実態です。
 そこで、それを補うものとして編み出されたのが春闘です。春の時期に一斉に賃金交渉を行い賃上げを獲得することにより、個別企業の競争力の差に変更を与えずに、社会全体の労働分配率を変えることにより、個別交渉の集合体として中央交渉的な機能をもたせることを狙いとしたものです。

2)産業別組織としての運動目標は、産業内における賃金を中心とする労働条件の規制です。

 労働条件を高い水準に維持するよう規制して行く、その有力な手段としてユ・シ協定などを使った労働力(雇用)の規制や中央交渉などがヨーロッパでは行われてきました。しかし、日本ではそのような条件は存在しません。
 それに代わるものが春闘であり、中には産業別の経営者団体との集団交渉を実現した産別組織も出てきました。その典型が、私鉄総連が行ってきた中央交渉ですが、むしろそれは例外であり、また、近年個別交渉への回帰が進み、解体してきたのが現実です。
 それでも、賃金水準が高く、収益力のある中央大手の企業の組合がパターンセッターとして先行し、その後に中小が続くという形態は、1つのたたかいの典型をなしています。むしろ闘争戦術を持とうとする組合にとって主要な闘争戦術であり、医労連もそれをめざしているといえます。

3)次に医労連、医療産業における条件について見てみましょう。

@医療産業は、私鉄のような寡占状態にないということが、まず指摘できます。病院だけでも92百を超える中小資本がひしめいています。医労連内の単組でも7百近くあります。産業全体の賃金水準に影響力をもつような大企業、あるいは大企業集団がないのです。

A組織内に国公立の集団を約5万2千(組織の約30%)を抱えています。

 また、賃金水準が比較優位な全日赤、健保、全労災など(約1万8千人、約10%)が、人勧準拠を押し付けられ、賃金闘争の先頭に立てない状況にあります。これらの組合は、人勧打破をめざしていますが、その展望はいまのところありません。

 さらに、私立大学病院は賃金水準も高く、社会的影響力も大きいと思われますが、少数組合が多く限界を持っています。

そこで先頭にたたざるを得ないのが、民医連・医療生協の労組なのです。
4)医労連の産別統一闘争の困難性
@賃金闘争の先頭に立っている民医連、医療生協労組は、3万6千名の組合員を擁する医労連の中の大部隊ではあります。
 しかし、賃金水準で言えば、中位に位置し、また、地域における社会的な影響力からいっても、賃上げ、更には賃金水準のパターンセッターとしてのふさわしい位置にいるとは決していえません。 また、大衆資本に支えられ、民主的な経営をめざしているという(その限りにおける)特殊性も持っています。
 そこが産別統一闘争の前面に立つと、景気が上向きの時期にはそうでもありませんが、停滞局面においては、労使関係の激化を招きます。
Aそもそも産別組織が、自己の組織の中における賃金、労働条件の規制をめざそうとする場合、産業の寡占状態が進み、しかもそのほとんどを組織していれば、その規制はたやすく、即産業全体の規制につながります。
 ところが医療業の場合、中小資本が乱立し、しかも医労連の医療産業における組織率は10%そこそこです。組織の中の賃金を規制できたとしても、それが即地域における賃金規制につながる状況ではありません。しかも、組織内の賃金の規制も格差がちじまらず、決して規制ができているとはいえない状況です。
B産業別統一闘争は、春闘の効果を産業別に当てはめた効果を持ちます。即ち個別の企業の競争力の関係に変化を与えず、産業内における労働分配率を労働者に有利なように変える、というものです。
 
労働組合としての組織力、統制力を背景に、戦術的には到達闘争を駆使したものです。先に指摘した中小資本の乱立は、到達闘争にとって不利な条件です。より多くの組合を統制しようとするには、多くの労力が必要ですし、困難が伴うからです。
 しかも、組合の組織力量に歴然とした格差があり、比較優位な賃金・労働条件を獲得している組合は、更に高い水準に到達し、格差は広がる傾向を持っているからです。医労連の産別統一闘争には、以上のような困難性が伴っていると思われます。


(2)医労連の産別闘争の新たな展開の可能性

1)到達闘争から「底上げ闘争」、「中長期の賃金闘争」重視へ
@医労連の到達闘争には先に指摘した、困難性が伴っていました。それでは、医労連の産別闘争に展望はないのかというと、そうではないと思います。高位の賃金水準にある全国組合が、人勧準拠を押し付けられ賃金闘争の先頭に立てないと指摘しましたが、それは「賃上げ幅」の到達闘争においてです。しかし、それは、「賃金水準」においても先頭に立てないことを意味しません。賃金水準が相対的に高いという事実に変わりはなく、そこにおいては、産別統一闘争の先頭に立っているのです。

 A到達闘争には先に指摘した困難性を伴っていました。そこでその困難性を補うものとして、賃金水準における到達闘争といった場合、「底上げ闘争」の側面と「中長期の賃金政策」の確立の追及という側面がどうしても必要になってきます。

Bまず、中長期の賃金政策の確立についてですが、その背景となるのが支払能力の拡大をめざす積極的な経営分析と参加型労働組合運動です。

 C底上げ闘争の柱になるのは、診療報酬闘争です。診療報酬の中に労働者の賃金部分を明確にさせることです(労働者の配置数に応じた点数設定、あるいは点数自体は独立性を持たず込みこみの点数であっても、その計算根拠として賃金部分の算定基礎数値を明確にさせる)。

明確になった賃金部分については、準最低賃金の扱いとさせ、個別企業内の交渉はそれへの上積み交渉になれば、理想的です(診療報酬の賃金部分については、毎勤統計などでモニターしながら、個別賃金への反映を行政指導させることも考えられます。賃金部分の改訂についてはスライド制の導入が必要でしょう)。
2)個別交渉と産別統一闘争、診療報酬とのかかわり
@これらの闘争形態は、幹部だけの理論闘争に終始したのでは目的は達成できません。単組の組織力量と産別としての統制力が、背景にないと話し合いも前進しません(中長期の賃金政策の確立は、通年闘争的側面と理論闘争的な側面を強く持っていますが、それへの到達は毎年の個別交渉の積み上げによって実現することに変わりはなく、統一闘争の設定は、従来とおり必要でしょう)。

 Aその上で、主張の根拠としては「生計費」論から経営分析に基づく積極的な「支払能力」論重視へ重心を移すということです。

 更に、中長期の賃金政策についての労使合意をめざします。

 B診療報酬の賃金部分の改訂については、産別の役割になります。中医協に医労連代表を獲得し、そこでの論戦になるのか、入ることが出来なかったとしてもその改訂に様々な方法で影響力を行使するということです。

 この賃金部分の改訂は、医労連独自の賃金交渉部分であって、その水準をどのようにするのかによって、医療産業の賃金水準の大枠が決まることになります。
 診療報酬の確定された賃金部分は、個別交渉における主張の有力な根拠となりますし、支払能力の土台ともなるものです。
 支払能力を企業内だけでなはく、医療・福祉産業全体でとらえることが必要ですし、そのカギを握るものが診療報酬といえます。

 

さいごに

 以上は、個人的な見解であり、1つの試案。単組での大衆的で民主的な討議が、重要です。