■派遣労働者について |
「労働者派遣事業の適正な運営の確保および派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」(以下「労働者派遣法」)が、1986年7月1日に施行され、16業種で派遣が解禁となりました。その後何回かの改正が行われました。 以下、その概略を説明します。 なお、用語の整理として「業務委託」を、「請負」と「派遣」の形態を含む総称とします(医療法では、「業務委託」=「請負」形態としていますから注意が必要です)。 |
1.医労連の見解 | 4.派遣労働の種類 | 7.医労連の方針 |
2.派遣労働とは | 5.派遣法成立の経過 | 8.労働者保護 |
3.下請との違い | 6.03年改正の概要 | 9.派遣元先の責務 |
1.派遣労働に対する医労連の基本的態度 |
医労連は、患者さんの医療や生命に責任を持つ立場から医療の職場は直営が原則であると考えています。 従って、医療職場への下請けや派遣の導入には原則的に反対です。 しかし、これは下請け、派遣労働者を敵視することとは、まったく違います。 県医労連は、「下請け派遣関連労組」を組織し、そこで働く労働者の賃金・労働条件の底上げと身分の安定化をはかり、それを通じて医療サービスの質の向上をめざしています。 法律上の団体交渉権は、雇用関係がある下請け会社や派遣会社としかありません。しかし、これだけでは派遣、下請け労働者の身分は守れません。何故なら、派遣・下請け労働者の賃金労働条件は派遣・下請け先病院との契約内容に大きく左右されるからです。また、そこの賃金水準、労働条件が、派遣、下請け労働者にも当然に影響するからです。 そこで、病院本体の労組との連携が重要となってきます。「県医労連下請け派遣関連労組」の場合、同じ医労連の仲間としてその運動が取組めます。「県医労連下請け派遣関連労組」の重要性と有利性がそこにあります。 |
医労連が反対する4つの理由する |
1.医療機関としての責任性の低下 2.業務の質的低下 @人権費の切下げに伴う未熟練労働者の多用による技能面の低下 A材料費引下げによる給食材料の質の低下 B医療労働に対する下請・派遣労働者の意識の問題(つきつめれば企業の意識の問題) 3.チーム医療の後退 4.営利化に拍車がかかる |
2.労働者派遣とは |
自己の雇用する労働者を下の図のように、派遣先と労働者派遣契約を結び、派遣先の指揮命令を受けて、労働に従事させることを業として行うことをいいます。
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3.派遣労働と下請けとの違い |
派遣労働の場合には、派遣労働者は派遣先病院の指揮命令下に入ります。 これに対して請負契約(下請け契約)の場合には、下請企業の労働者は病院の指揮命令には属しません。 何故なら、この場合の契約は業務の請けであり(例えば給食業務、医事業務等)、仕事の指揮命令は下請け企業の指揮命令者が行うこととされています。 従って、形式的には請負契約であっても、派遣先病院の指揮命令の元で労働者が働いている場合には「派遣形態」とされ、派遣対象許可業務以外であれば労働者派遣法第4条違反となります。また、当然その下請企業は派遣事業の許可、届出を行っていないと思われますので、許可業務、除外業務にかかわりなく労働者派遣法第5条違反となります。 |
下請け関係
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4.派遣労働(事業者)の種類 |
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5.派遣労働法成立からの経過 |
成立年 | 主内容 |
1985年 | 労働者派遣法成立。16業種に限定し認められる。(ポジティブリスト方式)(1986年7月実施) |
1996年 | 26業種に拡大。育児・介護休業取得者の代替派遣が認められる。 |
1999年 | 対象除外業務以外は原則自由化(1999年12月実施)。(ネガティブリスト方式) |
2003年 | 派遣期間の延長と対象業務の拡大(2004年3月実施) |
6.2003年6月法改正(2004年3月1日実施)の主な内容 |
労働者派遣法改正の概要
派遣期間の制限の見直し | 別表A |
派遣先による派遣労働者の雇用制度の見直し | ・派遣期間の制限を越えて同一業務に派遣労働者を使用しようとする場合は、派遣先に対し、派遣労働者への雇用契約の申し込み義務を課す ・26の専門的業務に3年を超えて同一の派遣労働者を受け入れている派遣先がその業務に労働者を雇入れるときは、その派遣労働者への雇用契約の申し込み義務を課す。 |
派遣対象業務の拡大 | 別表@ |
許可・届け出制の見直し | 一般労働者派遣事業の許可制、特定労働者派遣事業の届出制は事業所単位から事業主単位に変更。 |
紹介予定派遣の法制化 | 紹介予定派遣では派遣労働者の事前面接や内定を可能に等 |
派遣元責任者・派遣先責任者の職務の見直し | 派遣元責任者の職務、派遣先責任者の職務に、派遣労働者の安全及び衛生に関し、派遣元事業所(派遣先責任者にあっては派遣先事務所)の安全及び衛生に関する業務を統括管理する者と、派遣先(派遣先責任者は派遣元事業主)との連絡調整を行うことを追加する |
別表@ 派遣を行うことが出来ない業務の範囲
現 行 制 度 | 改 正 法 |
建 設 の 業 務、港 湾 運 送 の 業 務、警 備 の 業 務 | 引き続き適用除外業務とする |
その他政令で定める業務 |
2003年3月の政令改正により、左記の業務のうち社会福祉施設などで行われる医業等の業務については、派遣を行うことが可能となっている。したがって、左記の業務のうち派遣ができない範囲は、下記の範囲に限られる。 ▼医療法に規定する病院でおこなわれるもの▼身体障害者福祉法に規定する身体障害者療護施設に設けられた診療所等を除く診療所で行われるもの▼同法に規定する助産所で行われるもの▼介護保険法に規定する介護老人保健施設で行われるもの▼医療を受ける者の居宅で行われるもの |
物の製造の業務のうち省令で定める業務 |
派遣期間を1年に制限した上で、適用対象業務とする |
そ の 他 |
見直しなし (現行どおり) |
別表A 派遣期間の制限の見直し
現 行 制 度 | 改 正 法 | |
原 則 | 派遣就業の場所ごとの同一業務について1年が限度 | 1年を超え3年以内のあらかじめ定めた期間。ただし、1年を超える派遣期間とする場合には、派遣先(派遣を受け入れている事業者)はその事業所の過半数労組又は過半数を代表する労働者に通知し、意見を聴くものとする。 |
政令で定める26の専門的業務 | 通達により3年が限度 | 3年限度とする取扱いを廃止 |
(1) 労働基準法に基づく産前産後休業 (2) 育児・介護休業法に基づく育児休業 (3) その他これに準ずる場合として省令で定める休業を取得した派遣先の従業員の代替の業務 ※(3)の「省令で定める休業」については、産前休業に先行するまたは産後休業や育児休業に後続する母性保護・子の養育のための休業とされている |
通算して2年が限度 |
左記(1)〜(3)の休業のほか、「介護休業及びこれに後続する休業」も派遣期間の制限の対象外とする これらの代替要員派遣については、派遣期間の制限が撤廃される予定 |
事業の開始・転換・拡大・縮小・廃止などに係る業務であって、一定期間内に完了することが予定されている業務 | 3年が限度 | 現行どおり |
月初や土日のみ必要となる業務など就業日数が限られている業務 | 上記の各制限を適用 | 派遣期間の制限の対象外 |
解説@26業務 1号ソフトウェア開発の業務、2号機械設計の業務、3号放送機器等操作の業務、4号放送番組等演出の業務、5号事務用機器操作の業務、6号通訳、翻訳、速記の業務、7号秘書の業務、8号ファイリングの業務、9号調査の業務、10号財務処理の業務、11号取引文書作成の業務、12号デモンストレーションの業務、13号添乗の業務、14号建築物清掃の業務、15号建築設備運転、点検、整備の業務、16号案内・受付、駐車場管理等の業務、17号研究開発の業務、18号事業の実施体制の企画、立案の業務、19号書籍等の製作・編集の業務、20号広告デザインの業務、21号インテリアコーディネーターの業務、22号アナウンサーの業務、23号OAインストラクションの業務、24号テレマーケティングの営業の業務、25号 セールスエンジニアの営業、金融商品の営業関係の業務、26号放送番組等における大道具・小道具の業務 |
解説A紹介予定 介予定派遣を労働者派遣法の中で法文化。紹介予定派遣とは、派遣開始時に派遣期間満了時に、派遣先・派遣労働者双方が合意した場合には、その派遣労働者を派遣先が雇い入れることを約束して行う派遣のことです。一般の派遣では、派遣先による事前の面接や履歴書の送付を受けることは禁止されていますが、紹介予定派遣の場合は認められます。紹介予定派遣での派遣期間は6か月以下。 |
医師・看護師等の一部派遣容認に日本医労連強く抗議 |
2003年12月2日厚生労働省の労働政策審議会職業安定分科会・民間労働力需給制度部会は、病院等における医業等の業務について、紹介予定派遣に限って労働者派遣を行うことができるとする厚生労働省の諮問案を大筋了承した。そもそも今回の政令改正は昨年6月の法改正の施行(04年3月1日)のためのものであり、そこでも引き続き制限列挙して派遣禁止事業とされた医療業への派遣を部分的ではあれ容認することは、今回の法改正の本旨にないものであり、どさくさにまぎれた便乗的行為として強く抗議する。 当日の答申では、次のような労働者委員の意見書が添付された。「医療機関における医療業務の解禁については、安全・安心な医療提供体制の確保の観点から、慎重に検討すべきものである。紹介予定派遣に限り認めるという今回の政令改正は、安全・安心な医療を望む患者・医療現場の不安を必ずしも払拭できるものではないことから、医療資格者の派遣を行う派遣元事業主は、派遣労働者からの相談・苦情に適切に対応できるよう、専門的なスタッフ(医療職)の配置等の体制をつくるとともに、派遣先である医療機関はこうした体制をとっている派遣元事業主を選ぶことが望ましいこと等について、関係者への周知を行うこと」。紹介派遣による「事前面接」、「履歴調査」によっても、安全性、責任体制、チーム医療の確保の保証はないことを指摘している。 |
派遣労働者の雇用の努カ義務 |
派遣先は、派遣就業の場所ごとの同一の業務について派遺元事業主から継続して1年間派遣労働者を受け入れていた場合であって、引き続き同一の業務に労働者を従事させるためその1年間が経過した日以後労働者を雇い入れようとするときは、その同一の業務に1年間従事した派遣労働者を遅滞なく雇い入れるよう努めなければなりません。 *例えば同一の業務に1人目の派遣労働者を4ヶ月、2人目を8カ月受け入れた場合、合計1年となり、それ以上の派遣労働の利用はできなくなります。 |
7.医療機関における派遣労働と医労連の方針 |
私たちの運動で医療関係の業務は、政令で除外となりました。これは、医療関係だけでした。 しかし、「医療関係業務」の全面的な除外とはならず、「看護助手」、「調理師」、「医療事務」、「栄養指導以外の栄養士の業務」、「薬剤師の業務」、「設備管理関係の業務」は除外されませんでした。 今後、業務委託化の攻撃は強まるもんと予想されます。つぎのような方針で望みます。 1.例え許可業務であっても、医療に責任を持つ立場から業務委託反対の立場を貫く。 そのために、患者の立場からの各部門ごとの業務の見直しを行い、直営でやることの必要性を明確にする。 また、労働条件改善の要求を強める一方で、業務改善の取組みを強化する。 2.すでに業務委託が導入された病院、業務の実態を調査・分析し、業務委託の問題点を明らかにしていく。 3.下請・派遣労働者の労働条件改善に本格的に取り組む。これは、業務委託の下であっても医療の質を高める取組みでもある。 新たな、派遣労働者の雇用努力義務の規定も活用しながら、直営に戻す取組みにを強化する。 |
8.労働者保護のためのルール |
派遣労働者は、労働者派遣契約にもとづき、派遣先の指揮命令を受けて就業することになります。このため、派遣労働者の適正な就業を確保するため、労働者派遣契約についても、つぎのような規制を加えています。 |
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派遣労働者の権利 |
@労働基準法、労働安全衛生法、各種社会保険法の諸規程についは、原則として派遣元に責任があります。 A36協定の締結義務は派遣元にあります。残業した時には、本人が派遣元に申告することが必要です。 B派遣元先が派遣契約を打ち切った場合、派遣元は新たな派遣先を見つける努力をすると共に、残りの雇用期間に対して休業手当を支払う義務を負います。 C有給休暇の申請は派遣元にすることが必要です。しかし、実際とるのは派遣先においてであり、それとの調整も必要になります。 D派遣先が、面接などをして派遣労働者を選ぶことは禁じられています。また、派遣労働者の差替えを求めることもできません。 E派遣先が、派遣労働者に契約内容以外の仕事をさせることはできません。 |
9.派遣元事業主の講ずべき主な措置 |
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10.派遣先の講ずべき主な措置 |
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2005.4.28 rewrite