●小泉流「短文主義」にいう三方一両損とは?


危うげな言葉が踊っている。「三方一両損」。三方とは患者、保険者、医療機関。患者に負担を強いるので、医療機関も我慢をということで、診療報酬は引上げませんという主張につながる。「痛み分け」の論理は、誰も損をする者はいないかのような錯覚を与えやすい。

 医師会も「抵抗勢力」とのレッテルを貼られ、「医者は儲けている」との国民の「常識」の前に診療報酬引上げを堂々と言い辛い面がある。

 日本の医療費はGDP比では、先進国中二十位である。診療成績は上位であり、大変効率のよい医療システムである。その根底には、欧米諸国に比べ圧倒的に少ない医療スタッフと相対的な低賃金があり、医療事故の一つの原因ともなっている。

しかし、一方で医療費に関わる国庫の当然増が年間五千五百億円になるのも事実。GDPのどこからこの金を捻出するのか。財源は国庫、保険料、患者負担ということになる。今回の三方には何故か国庫は入っていない。それどころか、その負担率は下がることになる。

世の中は史上最悪の失業率。政府の宣伝とは裏腹にIT産業は雇用の吸収どころか吐出しを行っている。確実な雇用の吸収先として医療、福祉ががぜん注目されるのもうなずける。福祉労働者の低賃金は目を覆うものがある。診療報酬、介護報酬をマンパワーにお金が流れるような形で引上げることが重要だ。

財源は?住生総研の報告書は、公共事業を十年で半減し、それを社会保障の財源に当てることを提案している。経済産業省の産業構造審議会は、薬剤の高コスト体質を是正することによる財源確保を提言している。知恵も方法もある。

小泉流の「短文の羅列」ではない、接続詞も使った丁寧な議論が必要な時期だ。その議論に乗るためにも医療機関側の情報公開は欠かせない。(T.T