●韓国労働運動の戦闘性と階級性?


全労連と韓国の民主労総との正式の交流が行われた。同労総主催の「アジア地域労働組合会議−グローバル化と軍事化に挑戦するアジア労働者の連帯と統一に向けて」に要請を受け正式に参加したとのこと(全労連機関紙1210日付け)。

韓国には2つのナショナルセンターがある。韓国労総と民主労総だ。両者とも国際自由労連に加盟する。前者を連合、後者を全労連にたとえる人もいるが、そう単純ではなかろう。

また、韓国の労働運動(主に民主労総)の戦闘性にだけに目を奪われるのも危険だろう。

私は、労委労協の調査で今年9月下旬に韓国を訪問したが、自殺までする“戦闘性”の原因を突き止めることも個人的な関心事であった。

その背景に不十分な労働者保護法制があることが分かった。整理解雇、構造調整などはストの対象外。ストが合法となるためにはまず労働委員会に調停申請しなければならない。その結果、公益事業では合法ストはきわめて難しい。「違法」ストには、民事の損害賠償がともない、それが組合だけではなく労働者個人やその保証人にも及び、賃金・財産の差し押さえなどで生活困窮に追い込まれる事態もある。警察権力の介入も激しい(盧泰愚政権は、親労組政権と見られていたが政権発足半年で警察権力の投入を行った)。

遅れた労働法制と警察権力の介入が、労働者・労働組合を「違法」ストや“過激さ”に追込んでいるといえる。

「韓国労働者の戦闘性に学べ」というのは、非歴史的過ぎる。戦闘性は、時代背景を持っており、戦闘性のあり方が問題だろう。日本におけるそれは、韓国におけるそれとは違うはずだ。

グローバリゼーションへの対応もしかり。韓国労総と民主労総との対応は分かれている。韓国労総の幹部に話を聞いた際、国内経済に与える影響とともに企業の競争力の維持にも言及していた。IMF−JCの対応は、金属産業の海外生産比率が16.7%2001年)になる中、「日本の金属産業は高付加価値化による競争力の強化により台湾・中国等と棲み分けを図る必要がある」というものだ。韓国労総は、連合やJCとの交流も盛んで、このような方向で方針を模索しているような印象を受けた。

労働組合には主張や理念の正しさだけではなく、結果責任も問われる。韓国労総から民主労総への組織統合の呼びかけもされている。また、両組織が中心となりそれぞれ政党を立ち上げている。両労組の模索に注目したい。

記事には、戦闘的な労働組合から所属の違いを超え10カ国26人が出席とある。連合が招待されたのか定かではないが、国際交流と同時に本格的な国内交流が必要な時期にきている。(200312月。T.T)