●今の日本は人にやさしい社会か?


寒さが増す年の瀬を不安な気持ちで迎える人たちがいる。国立病院で働く「賃金職員」と呼ばれる人たちだ。来年4月の独立行政法人への移行にあたって「雇い止め」の上、大幅な条件の切り下げを迫られている。

総定員法と人手不足の現場との妥協の産物として生み出され、厚労大臣自身「お気の毒な存在」と認める。正職員と同じ仕事、責任で働きながら、賃金・労働条件面で差別を受ける。日々雇用で形式的に年度末に1日だけ首になる。10年、20年この境遇に甘んじてきた人もいる。職種も多様だ。看護師、看護助手、保育士、調理師等。

総定員法の縛りから解放される来年4月には、正職員になれると夢見たからといって誰が非難するだろうか。それが、夜勤のできる看護師を除き、6時間パートで年収がおよそ半分の130万円程度に。これをやるのが民間の経営者ならまだ「理解」もできるが、厚生労働省なのである。

いまや日本の賃金構造は、大、中・小、派遣・パートの3重構造だ。不安定雇用労働者は全雇用者の3割に達しようとしている。その労働の適正な評価は厚労省自身の重要課題のはずだ。「環境にやさしい社会」が、近年注目されるようになってきた。「人にやさしい社会」にもっと関心が寄せられても良い。国立病院の賃金職員をどう処遇するか、厚労省自身が試されている。(「高知新聞」への投稿。200312月)