●本当の「勝ち組」とは?


いまやお馴染みとなった「勝ち組」と「負け組み」の言葉。使い始めの張本人である落合信彦氏によると、「勝ち組」にはそもそも二つの意味があるとのこと。

1つは本当の意味での人生の勝者。人生のシャッターが閉まるときに、「自分は可能性の限界まで燃焼したすばらしい人生を送ることができた」と自信をもって言える人間のことであり、経済的な意味に限定したものではない。もう1つは、移民したブラジルの地で日本の敗戦を知らず、「日本の勝ち」を信じ込んでいた日系人を皮肉をこめて呼んだ「勝ち組」という意味。氏は、後者を同じ流れで「にわか成功者」、「火事場泥棒的勝ち組」とも表現している。

  この定義からすれば、「勝ち組」の象徴といわれた堀江モンは、後者の意味、即ち「にわか成功者」の典型であり、それを地で行き、堀の中にころがっていったことになる。

  それにつけてもあきれるのは、日本企業の「企業の社会的責任(CSR)」に対する感覚のなさ。

CSRには一般的に3段階あるといわれている。第1段階は、法令順守。第2段階が倫理的実践。第3段階が、社会貢献。堀江モンやホテル東横インの西田社長に、倫理的実践や社会貢献までも求めようとは思わない。しかし、法令順守は企業人として超えてはならない一線だろう。

  資生堂は、いまや大学生の就職したい企業ランキング総合5位。女性では堂々の1位企業。その人気の背景には、同社のCSRへの取組みがあるといわれる。同社のCSRの起源は、近江商人の「三方よし」にある。「三方よし」とは、売り手よし、買い手よし、世間よし、ということ。

  本当の「勝ち」は、独りよがりの「勝ち」であってはならず、「三方勝ち」でなければならない。また、「三方勝ち」でなければ、長続きはしないということである。

「勝ち組」、「負け組み」の言葉を経済的な成功という表面的な意味でもてあそばず、人生観、仕事観、企業の社会的責任という深層のレベルで問い返すことが、必要な時期である。

年間の自殺者3万人超の日本社会。問われているのは社会、企業のあり方であることは勿論、その1つの主人公である私たち一人ひとりの人生観そのものでもあるだろう。

(T.T 2006.2.10)