●希望格差社会の是正を!


 高知の医療フォーラムで民間では最大規模の病院理事長が、「これからは金か愛がなければまともな老後はおくれない」と講演した。金がない人は、家族を大切にし、家族介護に頼るしかなくなるという主旨だ。▲しかし、その望みさえ打ち砕くのが2006年版「労働経済白書」の次の分析だ。「非正規労働者では配偶者のいる割合が低く、少子化が進む要因になっている」。「性愛」さえも金持ちの占有物になって行くのかと空恐ろしい。所得格差は、確実に「希望格差」にまで達している。▲格差社会の象徴的言葉である「勝ち組」「負け組」。落合信彦氏によると、「勝ち組」はそもそも、移民したブラジルの地で日本の敗戦を知らず、「日本の勝ち」を信じ込んでいた日系人を皮肉くった言葉らしい。氏は、これを同じ流れで「にわか成功者」、「火事場泥棒的勝ち組」とも表現している。▲この典型であるホリエモンは、絵に描いたように転落した。しかし、人生が複雑なのは、転落しない場合もあるということだ。「額に汗した人は報われる」場合もあるし、そうでない場合もある▲「・・・報われる」という台詞は、以前は貧乏人が使った言葉だが、いまや「額に汗した」を「努力した」に置き換えただけで、経営者、裕福層の常用語になっている。その趣旨を体現するという「成果主義」賃金が所得格差を拡大している。日本政治の一大テーマの1つが、「格差社会の是正」だ。言葉のすり替えを見抜く感性と運動が求められる。

(T.T 06.6.2)