●ステイクホールダーとしての労組の可能性


「既存の権利を堅持する春闘では共感は得られない」との19日付け本紙社説の指摘に、労働組合としてどう答えるのか。

ヨーロッパを一つのヒントにしたい。フランスの組織率は10%弱。ドイツはかろうじて30%代であるが、日本との大きな違いは、代議制民主主義を補うものとして「政労使」の政策合意システムがあることだ。フランスの週三五時間労働制は、労使の中央合意を政府が法案化したものだ。背景には、ワークシェアリングによる雇用増の共通認識がある。

昨今、企業のコーポレート・ガバナンス(企業統治)が、環境や食の安全性など社会的責任との関係で論議されることが多い。

 春闘は、労働組合のあり方が厳しく問われると同時に、企業統治のあり方が問われる場でもある。不安定雇用労働者の処遇問題や高失業率は、有効な運動を組織し得ていない労働組合の問題であると同時に、一方の主体としての経営側の問題でもある。「既存の権利」「利害」から離れるべきは、経営側も同様だ。

 労働組合は、消費者、地域社会と同じく企業にとってのステークホールダー(利害関係者)でもある。他のステイクホールダーと同じ目線で行動するとき、企業統治のあり方に影響力を行使できるだろう。政労使の政策合意システムが実現できればなおさらである。

 中央と比べ射程は短いが、県段階での意見交換を超えたシステム構築を検討できないか。

 (高知新聞への投書 04.1.20)