企業は何のために存在するのか


 成果主義の導入の声は医療界においても昨今特にかまびすしいが、批判するわれわれの視点はその問題点の指摘に終始しているように思われる。
 このHPでは、2つの柱から真正面から問題提起を試みたい。1つは「人間は何のために働くのか」、2つ目は企業統治のあり方という視覚から「企業は何のために存在するのか」という視点である。
 私が、見聞きした範囲ではあるが、至言ともいえることばを紹介し、時に若干のコメントを付したい。
 このページでは、標記のテーマをあつかう。


「人を大切にして人を動かす」 テルモ会長 和地 孝 東洋経済新報社

・「社会的な貢献をするという使命感」が、企業にとってもそこで働く人にとっても、最高の目的なのであり、また、企業風土の中核をなすものだ。p13
・使命感なくして成長はありえない。14
・テルモの理念は、「医療を通じて社会に貢献する」15
・「人は強くなければ生きては行けない、やさしくなければ生きる資格がない」というのはレイモンド・チャンドラーの有名な小説の中の言葉です。
 企業も同じことで、常に業績を向上させ、ビジネスを強化しなければ生きては行けませんが、一方で社会に貢献し、社会的な責任を果たさなければ存続する価値がないと思います。16
・「顧客志向」が社会的使命感へとつながる。96 顧客志向こそ人にとっても企業にとっても成長の糧となる。9

企業風土改革の軸

@アソシエイト経営

A人を軸とする経営 ⇒ 「顧客志向」
 *理念に客観性を与え、使命感という志が大きなエネルギーを持つ。開発遅れや市場ニーズからずれた商品開発もなくなった。

Bグローバル経営



企業風土改革の軸

@例えば、アメリカの法律事務所などで弁護士を幹部として遇するとき、「共同経営者」という意味で「アソジエイト」と呼んだりします。法律事務所に限らずアメリカのビジネス社会では、こうした意味合いで「アソジエイト」が頻繁に使われているようです。
 このときに私の頭にあったのは、まさにそうしたニュアンスでの「アソジエイト」でした。
 そこで、私は「アソジエイト」という言葉を次のように拡大解釈して定義することにしたのです。 個性や立場が異なる者がお互いの個性を尊重し、あるいは共同して、より高い価値を生み出すこ
と」
これを少し平たく言い換えると、「社員の一人ひとりが主体性を持って企業活動を行い、個性とチームワークを発揮していく」ということになります。P22-23

A「人は財産である」「人を大切にして育てる」。「人は固定費・コスト」という考えとは逆の方向。「人はコストではなく資産。人を育成し、その人が良い仕事をして業績を上げる。そして、人を育てれば、それは会社の含み資産が増えるということになる」p30
 「人を使い捨てる体制」から「人を大切にして育てる体制」への転換。P31
 「自分たちの顧客とは患者さんたちのことであり、医療機器を真に求めているのは患者さんなのだと明確に意識してこそ、自分たちの仕事がどのようにして社会に貢献しているのか、実感としてわかるようになります。この実感が仕事への意欲につながり、企業を成長させます。
 ですから、自分たちの顧客が患者さんたちであるということをはっきり意識したときから、テルモの本当の復活は始まると私は考えたのです。
 私は社員たちに「顧客のことを考えなさい」と繰り返し言い続けました。また、顧客を知るようにと、生産部門の人間などにも医療の現場へ行くようにと勧めたのです。顧客志向という一致した方向性のもと、インドラネットやビデオ社内報などを用いて社内のあらゆる部門の情報を流通させ、問題意識を皆で共有できる体制を整えていったのです。
 こうした日々の積み重ねの結果、今では生産の部門も営業の部門も、顧客のことを意識することで社内の共通認識が生まれ、同じ言葉で語し合えるまでになっています。そして、かつて問題だった開発遅れや市場ニーズからずれた商品開発などもなくなり、業績も成長軌道に乗ったのです。
 本当の顧客が誰であるかを明確にし、常に顧客を意識することで、自分たちが何のために仕事をしているのかをしっかりと自覚できます。この自覚が社員にとっても会社にとっても、成長への大きなエネルギーを生んでくれたのです。」p38-39


日米の企業の差

・「アメリカの企業はマネー」

 *売り買い自由(換金可・細切れと統合可
 人=(同じ大きさの)レンガ=取替え可能

・「日本の企業は城」

 *唯一無二の存在、多様な人の有機的結合集団
  誇りと愛着の対象

  人=石垣の石(大きいのも小さいのも組み合
  せて使う)



合理化すべきは「人」ではなく「人件費」

・日本固有の文化土壌では、人を減らそうとすと有能な人まで出て行ってしまう。

・人件費の削減=給与を下げることではない。

 人を大切にし、生産性を上げること。

・一人一人の生産性が上がると、業績に対する人件費の割合を下げることになる。






「松下幸之助 日々のことば」PHP研究所

・社会のため、人々のために奉仕・貢献するのでなければ、事業を大きくする必要はないと思う。
・企業が天下の人、物、土地、金を使いながら、社会に何のプラスももたらさないのは許されない。
・かつてない困難からはかつてない革新が生まれ、かつてない革新からはかつてない飛躍が生まれる。
・景気のわるい年は、物を考えさせられる年。だから、心の改革が行われ、将来の発展の基礎になる。
・利益は、人々の生活を高めるという尊い事業の使命を更に果たしていくための資金である。
・反省のない経営に発展はない。発展がある経営には必ず反省があると思う。
・労働組合と会社は車の両輪のようなものである。片方だけが大きいと正しく前へ進みにくい。
・会社の繁栄は社会への貢献につながる。そこに人間として産業人として働く意欲を感じることが大切。
・「苦労は買ってでもせよ」というが、不況とはその貴重な苦労が買わずとも目の前にあるときである。
・仕事に対する自信と力がいくらあっても、人の使い方、育て方が下手であれば、経営はうまくいかない。
・いかに情報を集めても、それに的確に対応できる能力がなくては、情報化ではなく情報過になりかねない。
・社長はいわば方向指示機付きお茶くみ業である。従業員を主人と心得、仕えようという心がなければならない。
・仕事は社会に奉仕する使命を果たすと同時に、みずからを磨き高めていく人間形成の場でもある。
・事業経営で一番大切なことは、すべての関係先とともに栄えていく“共存共栄”の精神である。
・好況のときどうしていたかが、不況になって生きてくる。・就職試験で不採用とする人も、将来は会社のお客さんとなる人である。だからその対応は特に心して行わなければならない。
・事業の原点は、どうしたら売れるかではなく、どうしたら喜んで買ってもらえるかである。
・組織に人を合わせるのではなく、組織を変えてでも人を活かすことが望ましい。