経営者は労働者を勝手に解雇できない


経営者には、解雇権があるから気に入らない労働者は自由に解雇できると思ってはいませんか?とんでもありません。勝手に解雇はできないのです。

 



1、法律による解雇の禁止または制限


@不当労働行為としての解雇の禁止(労組法7条)

A労働協約、就業規則に反する解雇の禁止(労組法16条、労基法93条)

B客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇(労基法18条の2)→解雇権乱用法理の明文化

C期間の定めのある労働契約期間中の解雇の禁止(民法627条)

D国籍・信条・社会的身分を理由とする解雇の禁止(労基法3条)

E労災休業期間中、産前産後休業期間中、およびその後30日間の解雇禁止

(労基法19条、65条)

F解雇予告または解雇予告手当の支払いのない解雇の禁止(労基法20条)

G監督機関への申告を理由とする解雇の禁止(労基法104条)

H育児・介護休業の申出又は育児・介護休業したことを理由とする解雇(育児・介護休業法10条、16条)



 最高裁の判決で確立しているものの、これまで労使当事者間に十分に周知されていなかった「解雇権濫用法理」が法律に明記されました。
 「解雇権濫用法理」とは、昭和50年4月25日の最高裁判決(日本食塩製造事件)において示されたものです。この判決では、「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になると解するのが相当である。」と判示されています。




2、経営者の権利濫用による解雇の無効(民法1条3項)



@解雇に値する労働者の過失のないもの

A他の労働者と差別取り扱いのある解雇

B地域的・産業的な労働条件等からかけ離れた非常識な解雇



3、整理解雇の有効要件(整理解雇の4要件)


@整理解雇の必要性が客観的に存在すること

A整理解雇を回避するための努力がなされていること

B整理解雇の基準および運用(人選等)が客観的合理性を持っていること

C労使間において労働者の納得を得るような充分な協議が尽くされ、労使間の信義則に反していないこと





4、首切りに負けない合言葉・10章


第1章  『辞めません」

第2章  やっぱり「辞めません」

第3章  退職強要にはきっぱり抗議を

第4章  人権蹂躙には厳重抗議を

第5章  出向・配転・移籍も断りましょう

第6章  会社よりも自分が大変

第7章  おだてにのらずに謙虚に拒否を

第8章  家族は首切りに反対です

第9章  最後は黙秘でもがんばりましょう

第10章  リストラ110番、看護師・介護婦110番などに相談を




経団連もこんなことを言っています

経団連行動憲章第6項 「従業員のゆとりと豊かさを実現し、安全で働きやすい環境を確保するとともに、従業員の人格、個性を尊重する。」

経団連行動憲章 実行の手引き 第6章 従業員のゆとりと豊かさを実現し、安全で働きやすい環境を確保するとともに、従業員の人格、個性を尊重する。

2.基本的心構え・姿勢

@従業員のゆとりや豊かさを体現できる仕組みづくり
従業員が「社会人間」としての自己を確立し、生活の中に会社生活を正しく位置づける観点からも、労働時間短縮を着実に進める。
 それとともに、フレックスタイム制や在宅勤務の普及、長期休暇の取得など、従業員の時間感覚に配慮した制度を一層拡大していく。

A快適で安全な職場環境づくり
 高齢者、女性、障害者の知恵、経験、能力と意欲を活用した多様で柔軟な雇用形態を用意する。そのため、業務設計を見直すとともに、育児、介護、ボランティアの休暇を円滑に取得できるようにする。
 また、企業活動の国際化に対応して、現地における従業員の安全性の確保や危機管理体制の確立に努める。

B人権の尊重と公平・平等な処遇
 従業員の人格、特に人権を尊重する。この目的のため、女性、身体障害者の雇用拡大など、公平・平等の視点から雇用システム、人事システムを見直す。
 また、企業の国際化の進展とともに、企業の海外進出、海外企業との合弁・提携の増加、さらには今後、日本国内での外国人雇用の拡大が予想される中で、人権の尊重や公平な処遇、諸制度の透明性の確保など、人事制度や雇用制度も国際的視点から見直す。

C従業員の個性の尊重
 企業あっての従業員という意識を改め、従業員の個性を尊重し、その中で従業員の主体性と創造性を最大限発揮させることにより、企業も発展するという意識に立つ。そのための企業風土づくりに努めるとともに、人事制度、人材育成プログラムを開発する。
 一方、日本的経営の特長である情報共有の仕組み等は維持していく。



5.「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(要旨)


<平成15年厚生労働省告示第357号>
1 契約締結時の明示事項等
(1) 使用者は、有期契約労働者に対して、契約の締結時にその契約の更新の有無を明示しなければなりません。
(2) 使用者が、有期労働契約を更新する場合があると明示したときは、労働者に対して、契約を更新する場合の判断の基準(*1)を明示しなければなりません。
(3) 使用者は、有期労働契約の締結後に(1)または(2)について変更する場合には、労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければなりません。

2 雇止めの予告
 使用者は、契約締結時に、その契約を更新する旨明示していた有期労働契約(締結している労働者を1年を超えて継続して雇用している場合に限ります。)を更新しない場合には、少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません。

3 雇止めの理由の明示
 使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由(*2)について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。
 また、雇止めの後に労働者から請求された場合も同様です。

4 契約期間についての配慮
 使用者は、契約を1回以上更新し、1年を超えて継続して雇用している有期契約労働者との契約を更新しようとする場合は、契約の実態及びその労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければなりません


⇒ 判例等(雇い止めが無効とされる3つのケース)


●有期雇用契約労働者のその他の権利 

 雇用の継続以外の権利についても、法律上除外されていない権利は当然に有期雇用労働者にも保障されます。その権利が一定期間の雇用継続を前提としている場合でも同様です。
 例えば、年次有給休暇は、6か月勤務を継続した労働者に対して認められる権利ですが、2か月の有期雇用を3回更新して6か月継続勤務した場合は期間の定めのない労働者と同様、年10日の年次有給休暇を取得できるのです。ただし週30時間未満などの短時間労働者の取得日数は労働時間等に比例して短くなります。
 また、事業者は有期雇用労働者に対しても1年に1回の健康診断を実施しなければならず、深夜業に従事する場合は6か月ごとに実施しなければなりません。これより短い有期雇用の場合でも、契約更新によって6か月以上になれば、健康診断の対象となります。
(東京都産業労働局「働く女性と労働法」2004年版より)





解雇制限と解雇予告

 



2005.4.28 rewrite