有期効用契約の更新拒否が無効となる3つのケース


有期雇用の契約更新拒否が無効となる場合として、次の3つに分けて考えることができます。
(1)契約更新が重ねられた場合

 有期雇用契約が反復更新されて期問の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合には、更新拒否には解雇と同様客観的で合理的な理由が必要とされ、そのような理由が認められなければ更新拒否は違法となり、自動的に契約更新されます。
 東芝柳町工場事件(最高裁昭49722)は、5回から20回にわたって契約の更新をされた後に雇止めされたケースについて、本件雇止めの思想表示は実質上解雇の意思表示にあたるので解雇に関する法理を類推すべきであるとした高裁判決を是認し、更新拒否してもやむを得ないと認められる特段の事情がなければ 雇止めできないとの判断を示して、この考え方は判例上確立しました。
 また、有期雇用の整理解雇についても、正社員と同様、解雇回避のための努力を尽くすべきであり、企業全体としてはまだ余力を残していたのに、希望退職者の募集や余剰人員確定の努力をせず、定時社員であるという理由だけで行った雇止めは、合理的理由がなく無効という判決も出されています(三洋電機事件、大阪地裁平3.10.23)。

(2)最初の更新拒否が無効となる場合

 契約更新が重ねられていなくても更新拒否が違法となる場合があります。判例では、その雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期問、雇用継続の期待をもたせる言動・制度の有無などが考慮され、これらの諸事情を総合して労働者が継続雇用の期待をもつことが肯定できるような場合は、雇止めに正当な理由が必要とされてきました。
 そのなかで、契約期間1年の「臨時雇運転手」が1年の期問満了により雇止めされた事件で・臨時雇運転手は自己都合で退職する者以外は雇用を継続され・、正規運転手に欠員が生じたときには正規運転手に登用されてきたことから、期間満了後の継続雇用を期待する合理性があるので更新拒否が相当と認められる特段の事情がなければ最初の更新拒否でも無効であるという判決が出されるようになりました(龍神タクシー事件、大阪高裁平3116)
 最近の判例としては、「労働者において、その更新について相当程度の期待がもたれる事情が認められ、一方、雇用者においても雇用を拒絶するについて正当な理由がない場合には、衣更新拒絶は権利の濫用とレて無効になる」という判決があります(協栄テックス事件、盛岡地裁平10424)

(3)権利行使を理由とする更新拒否
 
 更新拒否が、妊娠、出産、出産休暇をとったこと、労働組合に加入したことなど'法律上保障された権利行使を理由とする場合はもちろん違法・無効ですgまた均等法の紛争解決援助を求めたり、調停申立てをしたことを理由とする更新拒否が許されないことは、均等法の通達に明記されました。これらの理申がはっきり示されなくても、それまで契約更新されてきたとか他の人は契約更新されたのに権利行使をした人だけが更新拒否されだといった場合、使用者が正当な理由を説明できなければ、違法な更新拒否と判断されます。

東京都産業労働局「働く女性と労働法」2004年版より