地裁は、臨時社員の労働の内容は女性正社員と同一であると判断し、会社が正社員との顕著な賃金格差を維持拡大しつつ長期間の雇用を継続したこと
により、公序良俗に反し違法として、差額賃金相当の損害賠償を命じた。
また同一(価値)労働同一賃金の原則
はこれを明言する実定法の規定は存在しないが、その根底には均等待遇の理念が存在し、それは人格の価値を平等とみる市民法の普遍的な原理と考えるべきものであるとした。
ただし、均等待遇については、ある程度会社の裁量も認められるとし、臨時社員の賃金が正社員の8割以下になるときは裁量の範囲を超えるという判決となった。
その理由は、
- 使用者の臨時従業員制度の存在意義は認めることができる
- 使用者の臨時従業員制度は、その運用において労働基準法4条より禁止される男女差別があったとは認められない
- 「正社員」と「臨時社員」の区別は、労働基準法3条にいう「社会的身分」には該当しない
- 臨時社員の労働内容が女性正社員と同一であるにもかかわらず両者間に賃金格差を設けている使用者の臨時従業員制度は、同一(価値)労働同一賃金の原則の根底にある均等待遇の理念に違反する格差があり、公序良俗違反となる
- もっとも、同一(価値)労働同一賃金の原則は公序ではないこと、均等待遇の理念も抽象的なものであり均等に扱うための前提となる諸要素の判断に幅がある以上使用者側の裁量を認めざるを得ない
と、されていた。
8割という基準には明確な根拠が示されていないが、正社員と非正社員の仕事の内容がほとんど同じである場合に、正社員でないというだけで賃金に極端な差を設けることに歯止めをかけたものと言える。